人生に「失格」するとはどういうことなのか?[人間失格][書評]
どうも。
壮ト@MassOnishiです。
ええっとですね。この前っていうか今日なんですけど又吉直樹さんの"夜を乗り越える"を読みました。
本の中で"人間失格"がかなりピックアップされていたので、勢いで「そういえば読んだことあったな?」ってな具合にそのまま再読したんですね。
「夜を乗り越える」又吉直樹さん著 。読了ス。今まで何気なく読んでた文庫本や文学小説。考え方と言うか、ウスウス感じてたけどモヤっとしてた所を上手い事言葉で具体的に表されてて色々とスッキリ。読み直してみようかな「人間失格」
— 大西 壮登 (@MassOnishi) November 6, 2016
実は今回でこれ読むの三回目なんですが、ほとんど内容を覚えてません。
っというのも、
一回目→小学校夏休みの読書感想文。
二回目→速読の練習のため偶然に手元にあったため再読。
てなもんでしたから......。
なんで、今回ある意味すごい新鮮な気持ちで読む事が出来ました。今回はその書評です。
えっ?「"夜を乗り越える"の方じゃないんかーい?」そこはまぁね......ヘヘッ。
とりあえず、目次。
■ 失格した人間の半生
物語はある第三者が三つの肖像写真の印象を語るところからはじまります。一枚目は不自然な笑みを溢す少年、二枚目は端正な顔立ちだがどこか作り物の様な印象を受ける青年、三枚目は目が虚ろで何を考えているのか見当も付かない無表情な初老の様な男性。
そこから本作の主人公の一人称視点に移り。淡々と物語が進んでいきます。
幼少期のこの主人公の"葉蔵"がとにかく人間不信の塊みたいな人で、滅私の精神で他人と関わる際には徹底して"道化"を演じます。
やがて話は進み、その道化を見破られてドギマギしたり、絵を描くコトに目覚めたり、風俗に入り浸ったり、社会運動に参加したり、女と心中して自分だけ助かったり、精神病棟に入院したり、酒に溺れ女の家に転がりこんだり、嫁を寝取られたり、いよいよ薬に手を出して廃人になりかけたり.....
ええっと......。U先生、こんな内容の本を小学校の読書感想文の課題図書にしてよかったのでしょうか?
とにかく、終始"成功"よりは"破滅"の方向に主人公の人生はドンドン進んで行きます。
端から見て、崖っぷちの方に猛烈に向かってる人を見る感じでしょうか。
「そっちはヤバイっていってるのにー!」っと言いながら見るのを辞めれない感覚です。
■ 人は誰でも失格する??
お話の中で主人公である葉蔵は「他人から勧められたものは断れない」という自身の性質を語る部分があります。
それは↑でも述べた自身の人間への"不信"というよりは"恐怖"から引き起こされるモノなんだけど、この感覚が不思議と他人事な気がしないんですよね。
人間この社会で生きていくならば、なにかしら他人のコトをある程度意識して生活しているワケで。
時には謙遜したり、グループの輪を取り持ったり、嘘をついたり、そういうことをして社会の微妙な均衡を保って生きています。
葉蔵はその人間の本心が見えない心の奥底に対して"恐怖"を覚えます。
葉蔵は自分の本心を打ち明ける事を終始押し殺して生きていきます。また、人に対して嘘も付けません。
一般的(この表現が適切なのかは微妙ですが)な人が誰しも意識的・無意識的に自然とやっている事を、葉蔵は注意深く捉えうやむやにしません。とても純粋な感性を持って生きていきます。
ここらへんの感性や思考なんかは、実は誰でも思ってるけど語らない。むしろ、目を逸らしているところすらあるんじゃないでしょうか?
しかし、葉蔵のこの感覚は世間(この定義も作中で触れています)からは疎まれ、やがて"狂人"の烙印を押されてしまいます。
■ 内容の是非に関して
この本なんですが確かに名著なんですが、人によって好き嫌いがとてもはっきり分かれる事で有名みたいです。
そのコトは本書の解説や、又吉さんの"夜を乗り越える"でも取り上げられています。
本作は一人称で語られる部分が全体の大半占めてられています。
その表現によって主人公と自分を重ね合わせることが出来れば、この作品はかなりのめり込めます。もう失格路線まっしぐら。
また、作中で葉蔵以外にも竹一、ヒラメ、堀木といった人物が登場します。
当然彼らは葉蔵の事を他人からの目線でみていますが、 知らず知らずのうちに葉蔵以外の彼らの視点にたって物語や葉蔵を読み解いている自分がいるのです。
この部分が個人的には、とても面白いと感じました。
■総評
人間関係において本当は誰しも感じてるんだけど、敢えてそこは深く語らない。
というか、自らそういう部分を曝け出さないし、むしろ人々はその事に対して取り繕う
ところさえある。
本作では一人の人間がそれに真っ向から向き合う真摯な姿が描かれています。
実際に僕としても、「これは分かるわぁ~」「いやーないない笑」みたいなところがあ
って、なんというかそこらへんの距離感を確かめているうちにあっという間に読み終わ
った感じでした。
本書の内容は、著者である太宰治自身の半生をある程度踏襲し生み出されているそうです。
すでに読んだ方は面白かった。面白くなかった。いずれの感想あるかもしれません。
しかし、一つの時代の一人の人間の「生きるとはどういう事なのか」という。命をかけた文字通りの"命題"がこの作品には詰まっています。
文学は苦手とか、小難しい文章は嫌いとか、色々あると思いますが。
是非一度読んで見る事をオススメします。
Kindleだと無料だしね
ホンジャマ。
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